【2025年末版】生前贈与は「現金」で渡すな?改正2年目の「暦年 vs 精算課税」最適解と保険活用術

カレンダーも残り少なくなってきた12月。
「今年の分の生前贈与、まだ手続きしていないけど大丈夫かな?」
「そもそも、新しい制度と古い制度、どっちにするか決めきれていない…」と、焦りを感じていませんか?
2024年の大改正からまもなく2年。制度が複雑になり、選択を間違えると将来数百万円単位で損をする可能性も出てきました。
さらに、せっかく贈与した大切なお金が、子供や孫の浪費に消えてしまっては元も子もありませんよね。
でも、安心してください。まだ間に合います。
本記事では、「年末ギリギリでも間に合う手続きの急所」と、単なる節税で終わらせない「保険を活用した賢い資産移転テクニック」を完全解説します。
今年こそ、家族の資産を守る「最適解」を見つけましょう。
【2025年12月現在】改正からもうすぐ2年。「暦年贈与」と「相続時精算課税」の現在地
「改正で結局何が変わったの?」「私の場合はどっちがいいの?」
制度改正から約2年が経過した今でも、現場ではこのような質問が後を絶ちません。まずは複雑な法律論を抜きにして、今の生前贈与における「2つの最重要ポイント」と「年末特有の注意点」を整理しましょう。
「持ち戻し7年」のリスクか、「基礎控除」の確実性か
2024年の改正以降、生前贈与のルールは大きく以下の2点に集約されました。この違いを理解することが、選択の第一歩です。
- 「暦年贈与(従来型)」は足かせが増えた
これまで年間110万円まで非課税だった「暦年贈与」。この魅力は変わりませんが、相続発生前(亡くなる前)の贈与を相続財産に足し戻す期間(持ち戻し期間)が、従来の「3年」から「7年」へと延長されました。
つまり、亡くなる直前に慌てて贈与をしても、過去7年分は「なかったこと(相続税の対象)」にされてしまうリスクが高まったのです。高齢の方にとっては、非常に厳しい改正と言えます。 - 「相続時精算課税(新型)」は使いやすくなった
一方で、これまで「手続きが面倒」「一度選ぶと戻れない」と敬遠されがちだった「相続時精算課税制度」。こちらには新たに「年110万円の基礎控除」が新設されました。
最大のメリットは、この基礎控除内で贈与した分は、将来相続が発生しても「持ち戻しの対象外」になる点です。つまり、いつ亡くなっても、贈与した分は確実に子供の資産として確定します。
【現場のリアル】結局、みんな「どっち」を選んでいる?
私が実際に多くのご家庭の相談を受けている肌感覚としては、以下のような傾向がはっきりと出ています。
- 資産家・富裕層(資産数億円規模):
あえて従来の「暦年贈与」を継続するケースが多いです。なぜなら、110万円程度の少額をちまちま贈与するよりも、贈与税を払ってでも年間300万、500万と多額の資産を早期に移転させたほうが、トータルの相続税を減らせるからです。7年の持ち戻しリスクを負ってでも、スピードを重視する戦略です。 - 一般的なご家庭(一次相続の課税対象者層):
圧倒的に新しい「相続時精算課税制度」へ切り替える方が増えています。「うちはそんなに大金持ちじゃないし、難しいことは考えたくない。でも税金は払いたくない」という方にとって、年110万円まで申告不要(初回届出除く)で、かつ持ち戻しもない新制度は、まさに「安心・安全な選択肢」として支持されています。
【緊急確認】2025年分の贈与、銀行手続きは「12月〇日」までに行動せよ!
ここは非常に重要なので、声を大にしてお伝えします。
贈与は「あげます」「もらいます」という双方の合意と、実質的な財産の移転が完了した時点で成立します。
しかし、銀行振込の場合、年末年始は金融機関のシステムメンテナンスや営業日の関係で、着金が翌年1月になってしまうリスクがあります。もし着金が2026年1月1日になれば、それは「2026年分の贈与」扱いとなり、今年の非課税枠110万円をドブに捨てることになります。
理想は「クリスマス(12月25日)」まで。遅くとも銀行の最終営業日である「12月30日の15時」までには手続きを完了させてください。
特に今年は、駆け込み需要で窓口が混み合うことも予想されます。「まだ2週間ある」ではなく「あと2週間しかない」と考えて、今日にでも行動を起こすことを強く推奨します。
【タイプ別診断】あなたの家はどっちがお得? 具体的な資産シミュレーション
「制度の仕組みはわかった。でも、結局『私の家』はどっちを選べば損しないの?」
この疑問にお答えするために、よくある2つのモデルケースを使って、「最適解」をズバリ提示します。ご自身の状況に近い方を参考にしてください。
ケースA:資産5,000万円以下・子2人「とにかく手間なく非課税枠を使いたい」
多くのご家庭(基礎控除+α程度の資産規模)では、新しくなった相続時精算課税制度が「正解」になるケースが大半です。
- 理由:
最大の理由は「7年持ち戻しのリスクを完全回避できるから」です。
従来の暦年贈与(110万円以下)の場合、もし贈与を始めてすぐに相続が発生してしまうと、過去7年分(最大770万円分)が相続財産に戻され、節税効果が消滅してしまいます。いつ何があるかわからない以上、これは大きな不安要素です。
しかし、新制度の相続時精算課税なら、年110万円までの贈与は「申告不要」かつ「持ち戻しなし」。確実に子供の財産として確定させることができます。 - 根拠:
さらに、この制度には「2,500万円の特別控除枠」という強力なバッファがあります。万が一、110万円を超えて贈与したい年があっても、累計2,500万円までは贈与税がかかりません(相続時に精算)。
「孫の留学費用で今年は300万円渡したい」といった突発的なニーズにも柔軟に対応できるため、資産がそこまで多くないご家庭にとっては、非常に使い勝手の良い「守りの選択」と言えます。
ケースB:資産1億円以上・子3人「将来の相続税を確実に減らしたい」
いわゆる富裕層の方々は、安易に新制度へ切り替えないほうが良いでしょう。
- 理由:
110万円の非課税枠だけでは、資産の減るスピードが遅すぎるからです。
例えば、資産が1億円ある方が毎年110万円贈与しても、10年で1,100万円しか減らせません。これでは相続税の税率(最高55%)の及ぶ範囲を減らしきれません。 - 根拠:
あえて贈与税を払ってでも、年間310万円や510万円といった大きな金額を贈与するほうが有利です。
例えば、500万円を贈与した場合の贈与税は約50万円(特例税率)。実効税率は約10%です。もしこれを相続まで持っていて、将来30%〜40%の相続税がかかるなら、今のうちに10%の手数料(贈与税)を払って資産を移したほうが、トータルで数百万〜数千万円も手元に残るお金が増えます。
「7年持ち戻し」のリスクを背負ってでも、時間を味方につけて「攻めの贈与」を行うべきです。
注意!一度「精算課税」を選ぶと戻れない「片道切符」の罠
ここで一つ、絶対に覚えておいてほしい注意点があります。
「今年は精算課税にしたけど、やっぱり来年は暦年贈与で大きく動かしたい」ということはできません。この制度は、親(贈与者)ごとに選択できます。
例:
- 父からの贈与 → 相続時精算課税を選択(もう戻れない)
- 母からの贈与 → 暦年贈与を継続(まだ選べる)
このように、「誰から」の贈与を「どの制度」で行うかは、一度決めたら後戻りできない重要な決断です。だからこそ、年末の勢いだけで適当にハンコを押さず、この後お話しする「出口戦略(どう使うか)」まで見据えて決める必要があります。
ここが分かれ道!「生前贈与 × 生命保険」で効果を倍増させる裏ワザ
「銀行で振込をして、通帳に記帳して終わり」
もしあなたがこれまで、こんな風に機械的に贈与を行っていたとしたら、少し厳しい言い方になりますが「非常にもったいない」ことをしているかもしれません。
プロの視点から見ると、ただ現金を渡すだけの贈与は「2つの大きなリスク」をはらんでいます。
それを解決し、資産価値をさらに高める方法こそが、「生前贈与された現金を、生命保険の保険料に変える」というテクニックです。
なぜ「現金贈与」はおすすめしないのか?(浪費リスクと名義預金)
現金には色も名前も書いてありません。そのため、以下のトラブルが頻発しています。
- 「名義預金」と疑われるリスク
一生懸命、子供名義の通帳にお金を移しても、税務署から「これ、名義は子供だけど、実質的な管理者は親(あなた)ですよね?」と指摘されるケース(名義預金)が後を絶ちません。特に、子供が通帳の存在を知らなかったり、印鑑を親が持っていたりすると、贈与そのものが否認され、多額の相続税がかかることになります。 - 「消費」されて終わるリスク
「将来のために」と渡したお金でも、手元に現金があると、つい車を買ったり、旅行に行ったりと「消費」に使ってしまいがちです。これでは資産移転の意味がありません。
贈与された現金を「保険料」に変えるだけで、資産評価はどう変わる?
このスキームには、現金贈与にはない強力なメリットがあります。
- 最強の「贈与成立の証拠」になる
生命保険に加入するには、契約者(子供)本人の署名や健康状態の告知が必要です。つまり、「子供が自分の意志で契約し、お金を払った」という動かぬ証拠が残ります。これ以上ないほど強力な「名義預金対策」となり、税務調査に対する鉄壁の守りとなります。 - お金に「カギ」をかけられる
保険という形に変えることで、容易に解約して無駄遣いすることができなくなります。「これは将来のための大切なお金」というメッセージを、保険証券という形にして渡すことができるのです。
FPが教える「贈与税非課税枠」を使った生命保険加入の最強スキーム
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。2025年の今、最も効果的な流れは以下の通りです。
- 贈与契約書の作成: 親から子へ現金を贈与する契約を交わす。
- 現金の振込: 親の口座から子の口座へ振込を実行(※12月中の着金必須!)。
- 保険契約: その資金を原資として、「契約者=子、被保険者=子(または親)、受取人=子」という形態で生命保険(終身保険や変額保険など)に加入し、保険料を支払う。
こうすることで、年間110万円(相続時精算課税ならそれ以上)の資金が、非課税で子供の資産へと移転し、さらに保険の運用機能によって、将来的に「支払った額以上に増えて戻ってくる」可能性も高まります。
単に税金を安くするだけでなく、「資産を減らさず、むしろ増やして次世代にバトンタッチする」。これこそが、保険を知り尽くした私たちがお手伝いできる、真の相続対策なのです。
まだ間に合う?年末駆け込み贈与の「失敗しない」3つの鉄則

「よし、制度も決めたし、保険の活用も検討しよう。まずは贈与だ!」
そう決断された方、ありがとうございます。
ですが、ここからが本当の勝負です。特に12月後半の贈与は、たった一つのミスで「今年の110万円」がパーになる危険性があります。
最後に、実務家として毎年冷や汗をかいている「年末特有の落とし穴」を3つお伝えします。これだけは絶対に守ってください。
1. 振込日は「着金ベース」で考える(大晦日の振込はNG!)
「今はネットバンキングで24時間振り込めるから、大晦日の夜でも大丈夫でしょ?」
これは非常に危険な勘違いです。
贈与税のルールでは、原則として「受贈者(もらう人)が預金を管理できる状態になった時」を贈与の時期と考えます。
しかし、銀行間のシステムやメンテナンスによっては、12月31日の操作が「翌年1月4日扱い」になるケースが稀にあります。
通帳の日付が「1月」になってしまえば、それはどうあがいても「来年の贈与」です。
銀行窓口の最終営業日である「12月30日(火)の15時」。これが絶対のデッドラインだと心得て、できればクリスマスまでに済ませるのが鉄則です。
2. 契約書の日付は「合意日」にする(バックデートは脱税の元)
「振込はしたけど、契約書を作るのを忘れていた!日付を1月に戻して書いておこう…」
これは絶対にやめてください。契約書の日付(合意日)と、実際の振込日(履行日)に矛盾が生じると、税務調査で疑われる原因になります。
契約書は「お金を渡す前」または「同時」に交わすのが本来の筋です。今から作成するなら、正直に今日の日付で作成し、「署名日」と「振込日」が同じ年内に入っていることを確認してください。形式を整えることが、家族を守る盾になります。
3. 「通帳・印鑑」は絶対にあげた本人が管理する
これが最も多い失敗です。
「子供に通帳を渡すと使い込んでしまうから」と、親が子供名義の通帳と印鑑を金庫にしまっていませんか?
これは「名義預金」とみなされ、贈与そのものが成立していないと判断されます。どんなに契約書があっても、実態が伴っていなければアウトです。
もし浪費が心配なら、先ほどお伝えした「生命保険」を活用してください。保険証券という形であれば、親の手元に保管しておいても(契約者が子供であれば)贈与の事実は揺るぎません。管理権を移転させつつ、無駄遣いを防ぐ。これがプロのやり方です。
よくある質問とその回答(FAQ)
Q1:12月31日にATMで振込手続きをしました。今年の贈与になりますか?
銀行の処理日によりますが、リスクが高いです。多くの金融機関では年末年始の取り扱いが異なり、通帳への記載が「1月」になれば翌年分とみなされます。今年の非課税枠を確実に使いたいなら、12月30日15時までに着金を完了させてください。
Q2:孫への贈与は、結局どの方法が一番お得ですか?
孫は相続人ではないため、原則として「7年持ち戻し」の対象外です(遺言で財産を渡す場合などを除く)。そのため、従来の「暦年贈与」を使って毎年110万円ずつ渡す方法が、相続税の節税効果としては極めて高い効果を発揮します。
Q3:贈与契約書は毎年作らないといけませんか?
はい、都度作成してください。「毎年110万円を10年間贈与する」という約束を最初にしてしまうと、「最初から1,100万円を贈与する権利を渡した(定期金贈与)」とみなされ、初年度に多額の税金がかかる可能性があります。
Q4:贈与したお金を子供が生命保険に入れた場合、税務署に否認されませんか?
いいえ、正しく手続きすれば否認されません。むしろ「子供が自分で契約し、保険料を払った」という実績は、贈与が成立していることの強力な証明になります。ただし、保険料支払いの原資が贈与であることを明確にするため、お金の流れを通帳に残してください。
Q5:昨年は暦年贈与でしたが、今年から相続時精算課税に変えられますか?
はい、変更可能です。2025年分の贈与税申告時(2026年2月1日〜3月15日)に「相続時精算課税選択届出書」を提出してください。ただし、一度この制度を選ぶと、二度と暦年贈与には戻れないので、慎重な判断が必要です。
まとめ
2025年の現在地を知る
「7年持ち戻し」で厳しくなった暦年贈与と、「基礎控除110万円」が新設され使いやすくなった相続時精算課税。自分の資産規模と家族構成に合わせて、最適な制度を選ぶことがスタートラインです。
資産5,000万円以下なら「新制度」
多くのご家庭では、申告不要で持ち戻しもない「相続時精算課税制度」への切り替えが安心です。将来の税務リスクを消しつつ、教育資金や住宅資金など、必要な時に柔軟に援助ができます。
資産1億円以上なら「暦年贈与」で攻める
富裕層は、あえて従来の暦年贈与を使い、贈与税を払ってでも多額の資産を早期に移転すべきです。7年持ち戻しのリスクよりも、時間を味方につけた資産移転スピードを優先しましょう。
「現金」で渡さず「保険」に変える
現金のまま渡すことによる「浪費」と「名義預金」のリスクは、生命保険を活用することで解決できます。贈与の証拠を残しつつ、資産を運用して増やす。これがFPが推奨する現代の最適解です。
12月の手続きはスピード勝負
今年の贈与を成立させるには、12月30日までの着金が絶対条件です。契約書の作成、銀行振込、そして保険の検討。迷っている時間はありません。「親子で備える相続準備ナビ」では、年末の駆け込み相談も受け付けています。