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【基礎】代襲相続とは?孫や甥姪が相続人になる範囲とトラブル回避のFP流対策

【基礎】代襲相続とは?孫や甥姪が相続人になる範囲とトラブル回避のFP流対策

「相続の手続きを始めようとしたら、何年も会っていない甥っ子にハンコをもらう必要があると言われた…」

実は、相続の現場でご相談を受けていると、このような予期せぬ事態に直面して頭を抱える方は少なくありません。

亡くなった方のお子さんやご兄弟が先に他界されている場合、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という仕組みによって、普段交流のない親族が相続人になることがあります。

「揉め事に発展しないだろうか」「連絡はどう取ればいいのか」と不安になりますよね。

この記事では、複雑な代襲相続の仕組みを、難しい専門用語を使わずに事例を使ってわかりやすく解説します。さらに、「トラブルを未然に防ぐ具体的な対策」までお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?事例でわかる基礎知識

「代襲相続」という言葉、ニュースやドラマで耳にしたことはあっても、正確な意味まではご存知ない方がほとんどではないでしょうか。

文字通り解釈すると「代わりに襲う(おそう)」と書くため、少し怖いイメージを持たれるかもしれませんが、実際は「権利を受け継ぐ」という、残された家族を守るための大切な制度です。

まずは、この仕組みがどのような時に発生するのか、基本的な考え方を理解しましょう。

本来の相続人が亡くなっている時に起こる「権利のバトンタッチ」

相続の基本ルールでは、亡くなった人(被相続人)の財産は、配偶者や子供が受け継ぐのが一般的です。

しかし、人生には予想外のことが起こります。親(被相続人)よりも先に、本来財産を受け取るはずだった子供(推定相続人)が亡くなってしまっているケースです。

このような悲しい事態が起きた時、「亡くなった子供が受け取るはずだった相続権を、さらにその下の世代(孫など)が代わりに受け取る」という制度が代襲相続です。

イメージとしては、リレーの「バトンタッチ」を思い浮かべてみてください。

本来バトン(財産)を受け取るはずだった第1走者(子供)が走れなくなってしまったため、代わりに第2走者(孫)がバトンを受け取ってゴールする。これが代襲相続の全体像です。

この制度がある理由は、「公平性の確保」にあります。

もし代襲相続という制度がなかったら、「親より先に死んでしまった」という偶然の事情だけで、その子供(孫)は祖父母の財産を一切もらえないことになります。

これでは、親が長生きした家庭の孫と比べて不公平が生じてしまいますよね。そうした不平等を防ぎ、孫たちの生活を守るために、法律で認められた権利なのです。

【ケーススタディ】父が亡くなった時、すでに兄が他界していたら?

では、より具体的な場面でイメージしてみましょう。図解がなくても頭に浮かぶよう、あるご家族の事例をご紹介します。

【事例:佐藤家のケース】

  • 被相続人(亡くなった方):父(80歳)
  • 家族構成:母(すでに他界)、長男、次男(あなた)
  • 状況:長男は3年前に病気で他界しており、長男には息子(父から見た孫)が一人います。

この状況で、父(80歳)が亡くなりました。

さて、相続人は誰になるでしょうか?

通常であれば、相続人は「子供全員」なので、長男と次男の2人になるはずです。しかし、長男はすでに亡くなっています。

ここで「代襲相続」が発生します。

  1. 本来の権利者:長男が相続人になるはずだった。
  2. 代襲の原因:長男は父より先に亡くなっている。
  3. 代襲相続人:長男の権利が、そのまま長男の息子(孫)に移る。

結果として、この佐藤家の相続人は、「次男(あなた)」と「孫(長男の息子)」の2名となります。

もしここで、「兄さんは亡くなっているから、残った弟である自分(次男)だけが相続人だ」と勘違いして手続きを進めようとすると、後から「孫」の権利を無視したことになり、すべてやり直しになってしまいます。

特に、長男家族と疎遠になっていた場合、この「孫」の存在を見落としてしまうことが、相続トラブルの火種になりやすいのです。

このように、「亡くなった人の子供や兄弟が、先に亡くなっている場合」は、必ずその下の世代の存在を確認しなければならない、と覚えておいてください。

どこまで続く?代襲相続人になれる範囲と条件

「孫が代襲相続人になるなら、ひ孫もなるの?」

「甥っ子が亡くなっていたら、その子供(又甥・又姪)も相続人になるの?」

このような疑問は、ご相談の中でも頻繁にいただきます。

実は、代襲相続には「どこまでも続くパターン」と「一代限りで終わるパターン」の2種類が存在します。

ここを混同してしまうと、相続人の範囲を間違え、遺産分割協議が無効になってしまう恐れがあります。

亡くなった方(被相続人)から見て、「誰が」本来の相続人だったかによってルールが変わりますので、整理して見ていきましょう。

パターン① 子が亡くなっている場合(孫・ひ孫へ)

被相続人の「子供」が先に亡くなっている場合、その代わりになるのは「孫」です。

さらに、もしその「孫」もすでに亡くなっている場合はどうなるでしょうか?

この場合、権利はさらに下の世代である「ひ孫」へと移ります。これを専門用語で「再代襲(さいだいしゅう)」と呼びます。

結論から言うと、直系卑属(子供、孫、ひ孫…と続く血縁)に関しては、下に直系の親族がいる限り、制限なくどこまでも代襲相続が続きます。

理論上は、玄孫(やしゃご)であっても相続人になる可能性があります。

これは、「家」や「血縁」を重視する日本の相続法の考え方に基づいています。亡くなった方の血を引く直系の子孫には、手厚く財産を承継させるという原則があるためです。

  • ポイント子供のライン(直系)は、孫・ひ孫・玄孫へと、無限に続く。

パターン② 兄弟姉妹が亡くなっている場合(甥・姪まで)

一方で、注意が必要なのがこちらのパターンです。

被相続人に子供がおらず、親も他界している場合、「兄弟姉妹」が相続人になります。

もし、その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合、その子供である「甥(おい)・姪(めい)」が代襲相続人となります。ここまでは「孫」のケースと同じです。

しかし、もしその「甥・姪」も亡くなっていたらどうなるでしょうか?

甥・姪の子供(被相続人から見て又甥・又姪)に権利が移るかというと、答えは「NO」です。

現在の民法では、兄弟姉妹のラインにおける代襲相続は、「甥・姪まで(一代限り)」と決められています。

昭和55年の法改正以前はもっと広範囲でしたが、現在は「あまりに遠い親戚が相続人になると、関係性が薄すぎてトラブルになる」という理由から、範囲が制限されています。

  • ポイント兄弟姉妹のライン(傍系)は、甥・姪でストップする。(その子供には権利がいかない)

要注意!代襲相続が「起きない」3つのケース

「親が亡くなっていれば、子供は必ず代襲相続できる」と思っていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。以下のケースでは、そもそも代襲相続が発生しません。

1. 本来の相続人が「相続放棄」をしていた場合

これが最も誤解が多いケースです。

例えば、父が祖父の遺産について「借金が多いから関わりたくない」と相続放棄をした場合、その父は「初めから相続人ではなかった」とみなされます。

そのため、父の権利自体が消滅しており、孫が代襲して相続することはできません。

「親が放棄しても、孫の自分はもらえる」という都合の良い解釈は通用しませんので注意が必要です。

2. 本来の相続人が「欠格」や「廃除」には該当しない場合

少し専門的ですが、本来の相続人が犯罪を犯したり(欠格)、被相続人を虐待して権利を剥奪されたり(廃除)した場合でも、代襲相続は発生します。

「親が悪さをしても、その子供(孫)には罪はない」と考えられるためです。これは相続放棄とは逆の結論になるため、混同しないようにしましょう。

※見出しの「起きないケース」の文脈で補足すると、「相続放棄」は起きないが、「欠格・廃除」は起きる、という対比で覚えておいてください。

3. 養子縁組のタイミングによる違い

養子の子ども(被相続人の孫)が代襲相続人になれるかどうかは、「生まれたタイミング」が重要です。

養子縁組をする「前」に生まれていた連れ子などは、被相続人との血縁関係がないため、代襲相続人にはなれません。逆に、養子縁組をした「後」に生まれた子どもであれば、代襲相続人になります。

養子縁組が絡むケースは非常に複雑ですので、自己判断せず専門家への確認を強くおすすめします。

自分の取り分はどうなる?代襲相続人の相続割合(法定相続分)

「代襲相続人は孫だから、子供より取り分が少なくなるのでは?」

そう思われる方もいらっしゃいますが、基本的には「亡くなった親の権利を、そのまま丸ごと引き継ぐ」のが原則です。

ただし、代襲相続人が複数いる場合(孫が何人もいる場合など)は少し計算が必要です。

トラブルになりやすいポイントですので、具体的な数字をイメージしながら見ていきましょう。

基本ルール:亡くなった親の権利を「そのまま」引き継ぐ

代襲相続の計算の大原則は、「もし生きていたら、親がもらうはずだったシェア(割合)をそのまま受け取る」というものです。

例えば、以下のようなケースを想像してください。

【ケースA:相続人は子と孫】

  • 被相続人:父
  • 相続人:次男(生存)、長男(死亡・代襲者は孫Aひとり)
  • 遺産総額:2,000万円

本来なら、長男と次男で半分ずつ(1,000万円ずつ)分けるはずでした。

この場合、代襲相続人である孫Aは、亡き父(長男)の権利である「2分の1(1,000万円)」をそのまま丸ごと受け継ぎます。

叔父である次男と同じ立場、同じ金額を受け取ることになります。「孫だから遠慮して減らす」という法的なルールはありません。

代襲相続人が複数いる場合の計算方法(頭割りの考え方)

では、代襲相続人が複数いる場合はどうなるでしょうか?

ここで登場するのが「頭割り」という考え方です。

親(被代襲者)の取り分を、その子供たち(代襲者)で均等に山分けします。

【ケースB:孫が2人いる場合】

  • 被相続人:父
  • 本来の相続人
    • 次男(生存)
    • 長男(死亡)
  • 代襲相続人:長男の子である、孫Aと孫Bの2名

1. まず「家単位(親単位)」で分ける

まず、被相続人の子供である「次男」と「長男(の家)」で半分こします。

  • 次男の取り分:2分の1
  • 長男(の家)の取り分:2分の1

2. 次に「代襲者同士」で山分けする

長男の取り分である「2分の1」を、孫Aと孫Bの2人でさらに半分こします。

  • (1/2) ÷ 2 = 1/4

【最終的な相続割合】

  • 次男(叔父):2分の1
  • 孫A:4分の1
  • 孫B:4分の1

このように、代襲相続人が増えれば増えるほど、一人当たりの取り分は細分化されていきます。

「叔父さんは半分もらっているのに、僕たちは4分の1ずつか…」と感じるかもしれませんが、これは「長男という一つの財布を2人で分けた結果」であり、法的には公平な配分となります。

FPからのワンポイント

兄弟姉妹が相続人の場合(甥・姪への代襲)でも、計算の考え方は同じです。

ただし、「異母兄弟(腹違いの兄弟)」などが含まれる場合、ベースとなる相続分が「全血兄弟の半分」になるなど、計算が非常に複雑になります。

基礎控除の計算や相続税の申告が必要なレベルの金額になる場合は、素人判断で計算せず、必ず税理士などの専門家に試算を依頼することをおすすめします。

「知らなかった」では済まされない!代襲相続の3大トラブル

「法律で決まっているなら、淡々と手続きすればいいだけでしょ?」

そう思われるかもしれませんが、代襲相続が絡むと、普通の相続よりもトラブルに発展する確率が格段に上がります。

その最大の原因は、相続人同士の「関係性の希薄さ」です。

普段付き合いのない親戚同士が、いきなり「お金」の話をする。これがいかに難しいことか、想像に難くありません。

現場でよく直面する3つの泥沼パターンを知り、心の準備をしておきましょう。

【トラブル1】疎遠な甥・姪との遺産分割協議が難航する

最も多いのが、兄弟姉妹が相続人になるケースでのトラブルです。

例えば、あなたが亡くなった兄の財産を整理しようとした時、兄の子(甥・姪)が代襲相続人として登場します。

もし、その甥や姪と何年も連絡を取っていなかったらどうなるでしょうか。

遺産分けの話し合い(遺産分割協議)には、相続人全員の合意と実印が必要です。一人でも反対したり、無視したりする人がいれば、預貯金の解約一つできません。

「おじさん、僕には法定相続分の権利があるから、きっちり法定分のお金を払ってよ」

突然現れた甥からドライにこう主張され、思い出の詰まった実家を売却してお金を作らざるを得なくなった、という悲痛な相談も少なくありません。

「長年連れ添った兄弟の情」は、その子供世代には通用しないことが多いのです。

【トラブル2】孫にはあるが甥・姪にはない「遺留分」の誤解

相続には、最低限保障された取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があります。

遺言書で「全財産を愛人に渡す」と書かれていても、家族は「ちょっと待った!」と最低限の権利を主張できる強力な権利です。

ここで重要なのが、代襲相続人の立場の違いです。

  • 代襲した孫:遺留分があります。(本来の相続人である子供と同じ扱い)
  • 代襲した甥・姪:遺留分はありません。(本来の相続人である兄弟姉妹に遺留分がないため)

この違いを知らずに、甥や姪が「遺留分を侵害された!裁判だ!」と騒ぎ立て、実は権利がなかった…という無駄な争いもしばしば起きます。

逆に言えば、甥や姪が相続人の場合は、遺言書さえしっかり書いておけば、彼らの権利を合法的にゼロにすることも可能なのです。

【トラブル3】連絡が取れない・行方不明者がいて手続きが進まない

代襲相続が発生すると、関係性が疎遠な分、相手の連絡先すら知らないということがよくあります。

中には、住民票上の住所に住んでおらず、完全に行方不明になっているケースも。

相続人が一人でも欠けた状態では手続きが進められないため、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるなど、非常に煩雑で時間のかかる手続き(半年〜1年以上)が必要になります。

その間、被相続人の口座は凍結されたまま。葬儀費用や固定資産税の支払いに困窮する事態になりかねません。

相続のプロが教える!代襲相続のトラブルを未然に防ぐ「備え」

代襲相続の怖さをお伝えしましたが、安心してください。これらはすべて「事前の準備」で防ぐことができます。

「うちは大丈夫」と思わず、元気なうちに手を打っておくことが、残された家族(特に孫やお子さんたち)への最大の愛情です。

ここからは、FPとしておすすめする3つの対策をご紹介します。

遺言書の作成:誰に何を渡すか指定して「話し合い」を不要にする

代襲相続トラブルの特効薬は、なんといっても「遺言書」です。

先ほどお伝えした通り、トラブルの原因は「見知らぬ親族との話し合い(遺産分割協議)」が必要になること。

ならば、話し合いを不要にしてしまえばいいのです。

法的に有効な遺言書で「自宅は次男に相続させる」「預金は〇〇に」と指定があれば、原則として遺産分割協議を経ずに手続きが可能です。

特に、甥や姪には「遺留分」がないため、遺言書で「妻に全財産を相続させる」と書いておけば、疎遠な甥たちからハンコをもらう苦労から解放されます。

生命保険の活用:現金をコントロールする「魔法の財布」

私たちFPが強くおすすめするのが、「生命保険」の活用です。

なぜなら、死亡保険金は「受取人固有の財産」とみなされ、遺産分割協議の対象外になるからです。

例えば、お孫さんに確実にお金を残したい場合、現金をそのまま残すと他の相続人との分割対象になりますが、生命保険の受取人を「孫」に指定しておけば、その保険金は他の相続人の合意なしに、孫が単独ですぐに受け取ることができます。

また、逆に「代襲相続人にお金が渡るのを防ぎたい(特定の子供にだけ残したい)」という場合も、その子供を受取人にしておくことで、確実に資金を渡せます。

「渡したい人に、確実に、すぐに届く」。これが生命保険の最大の強みです。

生前贈与の検討:2024年以降のルール変更も踏まえた渡し方

「元気なうちにあげてしまう」生前贈与も有効ですが、注意点があります。

2024年(令和6年)1月以降、生前贈与を相続財産に足し戻す期間(持ち戻し期間)が、従来の「死後3年」から「死後7年」へと段階的に延長されています。

つまり、亡くなる直前に慌てて贈与しても、相続税の計算上は「なかったこと」にされてしまうリスクが高まっているのです。

ただし、この持ち戻しルールは原則として「相続人」に対する贈与が対象です。

代襲相続人にならない孫(親が存命の場合の孫)への贈与であれば、持ち戻しの対象外(※例外あり)となるため、早めの贈与は依然として有効な節税・遺産分割対策となります。

制度が複雑化している今だからこそ、長期的な視点でのプランニングが重要です。

よくある質問とその回答(FAQ)

Q1. 養子の子どもは代襲相続人になりますか?

養子縁組をした時期と、その子どもが生まれた時期の前後関係によって結論が異なります。もし、養子縁組をした「後」に生まれた子どもであれば、被相続人と血族関係が生じるため、代襲相続人になります。一方、養子縁組をする「前」にすでに生まれていた子ども(いわゆる連れ子など)は、被相続人との血族関係がないため、代襲相続人にはなれません。この判定は非常にデリケートなため、戸籍謄本での慎重な確認が必要です。

Q2. 相続放棄をした人の子どもは代襲相続できますか?

いいえ、できません。ここは非常に誤解が多いポイントですが、相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」とみなされます。そのため、放棄した人に代襲原因が発生せず、その子ども(孫)に権利が移ることもありません。借金などのマイナス財産を避けるために親が放棄をした場合、その負担が孫に行くことはありませんのでご安心ください。ただし、第2順位以下の相続人に権利が移る点には注意が必要です。

Q3. 孫への生前贈与は「持ち戻し」の対象になりますか?

原則として、孫への贈与は相続財産への「持ち戻し(加算)」の対象外です。2024年の法改正で持ち戻し期間が7年に延長されましたが、これはあくまで「相続人」に対する贈与が対象です。親が健在で、孫が代襲相続人になっていない場合は、孫は相続人ではないため、原則として持ち戻しの対象になりません。そのため、孫への贈与は依然として有効な節税対策と言えますが、遺言などで財産を受け取る場合は対象になることもあるため注意が必要です。

Q4. 遺言書で「長男に相続させる」とあった場合、長男が先に死んでいたら孫が相続しますか?

いいえ、自動的には相続しません。遺言書の内容は法定相続とは別物と考えます。特定の財産を「長男に」と指定していた場合、その長男が先に亡くなると、その部分は「無効」となり、代襲相続(孫への権利移転)は発生しません。もし孫にも残したい場合は、遺言書の中で「長男が先に死亡していた場合は、その子(孫)に相続させる」という予備的な文言(補充遺言)をあらかじめ記載しておく必要があります。

Q5. 甥や姪の子ども(又甥・又姪)は相続人になりますか?

いいえ、なりません。兄弟姉妹が相続人となるケースでの代襲相続は、その一代下の「甥・姪」までと法律で制限されています。甥や姪も亡くなっている場合、さらにその子ども(被相続人から見て又甥・又姪)が相続権を持つことはありません。昭和55年の民法改正前は認められていましたが、現在は「関係が希薄になりすぎる」という理由で廃止されています。この場合、他の相続人がいなければ、最終的に国庫に帰属する可能性もあります。

まとめ:代襲相続のトラブルを避け、円満な家族関係を守るために

まとめ
代襲相続は「亡き親の権利」をそのまま引き継ぐ制度

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が先に亡くなっている場合に、その子ども(孫や甥姪)が代わりに相続権を受け継ぐ仕組みです。孫だからといって権利が半分になることはなく、亡くなった親が受け取るはずだった法定相続分をそのまま引き継ぎます。まずはこの基本ルールを正しく理解し、自分たちの権利関係を把握することがスタートラインです。

まとめ
「どこまで続くか」は直系と傍系でルールが違う

被相続人の「子」のライン(直系)については、孫、ひ孫と下の世代がいる限りどこまでも代襲相続が続きます。一方で、「兄弟姉妹」のライン(傍系)については、代襲できるのは「甥・姪」までの一代限りという制限があります。甥や姪の子どもには権利が発生しないため、家系図を確認する際は、誰のラインかを見極めることが重要です。

まとめ
トラブルの原因は「疎遠な親族」との話し合い

代襲相続の最大のリスクは、普段交流のない甥・姪などが相続人になり、遺産分割協議が難航することです。「連絡先がわからない」「お互いの事情を知らない」「感情的な対立が起きやすい」といった要因が重なり、解決まで数年かかるケースも珍しくありません。予期せぬ相続人が現れることで、残された家族の絆に亀裂が入らないよう注意が必要です。

まとめ
遺留分の有無が交渉の決定的なカギになる

代襲相続人には、最低限の遺産を請求できる「遺留分」があるケースとないケースがあります。子が亡くなり孫が代襲する場合は「遺留分あり」ですが、兄弟姉妹が亡くなり甥・姪が代襲する場合は「遺留分なし」です。この違いを知っていれば、例えば甥・姪に対して強気な交渉ができたり、遺言書で対策ができたりと、トラブル回避の選択肢が大きく広がります。

まとめ
「遺言」と「保険」で未来の争いは防げる

複雑な代襲相続トラブルを未然に防ぐ最善の方法は、元気なうちの準備です。「遺言書」で誰に何を渡すかを明確にして話し合いを不要にし、「生命保険」を活用して特定の相手に現金を確実に届ける。この2つの対策を組み合わせることで、たとえ疎遠な代襲相続人がいたとしても、家族を守り、円満な相続を実現することが可能です。

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