【実録】「姉さん、正気か？」リフォーム代500万が水の泡…同居長男を襲った“相続貧乏”の悪夢
「私は父のために実家をバリアフリーにして、最期まで面倒を見ました。それなのに、家を追い出され、そのうえ300万円も払わなきゃいけないなんて……そんな馬鹿な話がありますか！」
私の事務所のソファで、高橋洋介さん（仮名・52歳）は両手で顔を覆い、男泣きしていました。
年収600万円、真面目な会社員。本来なら平穏な老後が見えてくる年齢です。
しかし今の彼にあるのは、泥沼の争いによって生じた多額の弁護士費用と、絶縁状態になった姉への代償金支払い義務、そして「住む場所を失うかもしれない恐怖」だけです。
「親と同居しているから、家は当然自分が継げる」
「リフォーム代も出したし、姉も分かってくれるはず」
もしあなたがそう思っているなら、この記事はあなたの未来そのものかもしれません。
高橋さんが陥った、相続税ゼロでも発生する「300万円の請求書」の正体を、包み隠さずお話しします。
「親孝行」が仇になる時
■ 誰もが羨む「仲良し家族」の裏側
神奈川県のベッドタウン。高橋さんは3年前、妻との熟年離婚を機に、独り身になった父・修造さん（80歳）が住む実家に戻りました。
実家は築40年。足腰が弱ってきた父のために、高橋さんは自分の貯金から500万円を出して、手すりの設置や浴室の改修、和式トイレの洋式化など、徹底的なリフォームを行いました。
「洋介、ありがとう。お前が帰ってきてくれて本当に心強いよ」
父のその言葉と笑顔が、高橋さんの支えでした。
高橋さんには2歳上の姉・京子さん（54歳・既婚）がいますが、彼女は隣県に持ち家があり、生活も安定しています。
たまに実家に顔を出しては、「洋介、お父さんのこと頼むわね」と笑顔で言い残して帰っていく。そんな良好な関係でした。
「親父が亡くなったら、俺がこの家を継ぐ。姉さんは嫁に出ているし、俺がリフォーム代も出したし、介護もしている。文句なんて出るはずがない」
高橋さんはそう信じて疑いませんでした。しかし、「口約束」と「法的な権利」は全く別物であることを、彼はまだ知らなかったのです。
階段の下で止まった時間
■ 突然の別れ
2023年の冬、悲劇は突然訪れました。
高橋さんが仕事から帰宅すると、廊下の電気がついていません。「親父？」と声をかけながらリビングへ向かう途中、足元に違和感を覚えました。
階段の下で、父が倒れていました。
救急車を呼びましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。死因は「頸椎損傷」。階段を踏み外しての転落死でした。
「まさか、こんなにあっけなく……」
リフォームで手すりはつけていましたが、まさかの事故。心の整理がつかないまま、通夜、葬儀へと雪崩れ込みました。
■ 姉の変貌
四十九日の法要が終わった日、実家のリビングで姉と向かい合った時です。姉の口から出たのは、労いの言葉ではなく、冷徹な要求でした。
「で、洋介。この家、いつ売るの？」
高橋さんは耳を疑いました。
「え？ 売るって……俺はここに住んでるんだぞ。リフォーム代だって500万円も出したし」
「それはお父さんのためにあなたが勝手にしたことでしょ？ 今、息子の留学費用がかさんで家計が苦しいのよ。この家、査定に出したら3,000万円になるって聞いたわ。売って1,500万円ずつ分けましょう。それが法律上の平等よ」
「ふざけるな！ 俺の家を奪う気か！」
姉の目は笑っていませんでした。
そこには、かつての優しい姉の面影はなく、権利を主張する一人の「相続人」がいただけでした。
争族が生んだ「300万円」の損失
■ 弁護士を雇うしかない
当事者同士での話し合いは決裂。「家を売れ」の一点張りの姉に対し、高橋さんは「住み続けたい」と主張。
埒が明かない状況に、姉側が弁護士を立ててきました。こうなると、高橋さんも対抗するために弁護士を雇わざるを得ません。
ここから、高橋さんの貯金がみるみる溶けていく日々が始まりました。
■ なぜ「相続税ゼロ」なのに300万円もかかるのか？
相続税の基礎控除内（遺産総額4,000万円以下）だったため、税金はゼロです。しかし、高橋さんに突きつけられた現実は、あまりに過酷なコストでした。
| 費用項目 | 金額 | 詳細 |
| 弁護士着手金・報酬 | 180万円 | 遺産分割調停の代理人費用。争う金額（不動産3,000万円）ベースで計算されるため高額化。 |
| 不動産鑑定費用 | 40万円 | 姉側が「もっと高く売れるはずだ」と主張したため、正式な鑑定評価が必要に。 |
| 測量・登記費用 | 50万円 | 境界確定測量（売却を前提とした調査を姉が要求）および相続登記費用。 |
| 戸籍・実費・日当 | 30万円 | 調停のための裁判所への出頭日当、膨大な資料収集費用など。 |
| 合計 | 300万円 | 税金ではなく「争うため」に消えたお金 |
「リフォーム代の500万円に加え、さらに300万円……。俺の退職金まで食いつぶす気か……」
高橋さんは、親の介護のために実家に戻り、家を綺麗にした結果、800万円近い資産を失いかけているのです。これが「対策なき同居」の恐ろしさです。
あまりに苦い決着
■ 判決のような結末
1年近くにわたる泥沼の調停の末、下された結論は高橋さんにとって厳しいものでした。
- 高橋さんが実家を取得する（住み続けることは認める）。
- その代わり、姉に対して代償金として1,200万円を支払う。
- 高橋さんが負担したリフォーム代は、「父への贈与」とみなされ、遺産分割の考慮（寄与分）にはほとんど反映されない。
「1,200万円……そんな現金、今すぐ用意できるわけがない」
結局、高橋さんは自宅を担保に銀行から借金をし、姉への手切れ金を用意しました。
姉とはそれ以来、一度も連絡を取っていません。
父が大切にしていた庭の木々は、手入れをする気力もなくなり、荒れ放題になっています。
相談に来られた際、高橋さんはポツリと言いました。
高橋さんの事例から学ぶ「同居相続」3つの教訓
親と同居している人、実家に資金を投入している人は、最も注意が必要です。
1. リフォーム代は「寄与分」として認められにくい
「親のために出したお金だから、相続時に考慮してもらえる」というのは幻想です。法的には「親孝行（扶養義務の範囲）」や「同居の対価（家賃タダだったでしょ？）」とみなされ、プラス評価されないケースがほとんどです。
2. 「家」は分けられない最大の火種
高橋さんのように「住んでいるから売りたくない」場合、相手を納得させるだけの「代償金（現金）」がなければ、最悪の場合、競売にかけられて家を失います。
3. 「遺言書」は家族への最後の手紙ではない、最強の契約書だ
お父様が「家は洋介に継がせる。預金は京子に」という遺言書を残していれば、姉は法的に文句を言えず、高橋さんは弁護士費用も代償金も払わずに済んだはずです。
「うちは仲が良いから」ではなく、「仲が良い今のうちに」書くのが鉄則です。
あなたの実家は「爆弾」を抱えていませんか？
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
高橋さんの話を聞いて、「ちょっと怖いな」と思ったあなた。その直感は正しいです。
「親と同居しているから大丈夫」
「兄弟で口頭の約束はできている」
その安心感こそが、トラブルの種です。親が亡くなり、大金が目の前に積まれたとき、人は変わります。
高橋さんのように、300万円もの無駄な費用を払い、借金を背負い、兄弟の縁を切るような未来を、私はあなたに迎えてほしくありません。
対策は、親が元気な今しかできません。
まずは、あなたの家庭に「隠れた火種」がないか、プロの目でチェックしてみませんか？
「あの時相談しておけば」と泣く人を、私はこれ以上見たくありません。
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