【遺言書作成】普通の家庭こそ必須!そのまま使える文例&チェックリストで失敗しない書き方【完全版】


「うちには大した財産がないから、遺言書なんて関係ないよ」
そう思っていませんか?実はこれ、相続において最も危険な勘違いなんです。
長年、多くのご家族の相続相談を受けてきたFPとして断言します。泥沼の相続トラブルの約8割は、ごく一般的な家庭で起きています。
「仲の良かった兄弟が、実家の分け方一つで絶縁状態に…」そんな悲劇を防げるのは、あなただけです。
「でも、書き方が難しそう」「無効になったら怖い」と不安になりますよね。
そこで本記事では、難しい法律用語は一切抜きで、そのまま使える「文例」や、見落としがちな「デジタル遺産」の扱い、さらに提出前に使える「無効回避チェックリスト」まで完備しました。
この記事を読めば、専門家に頼らずとも、家族への想いを込めた法的に有効な遺言書が完成します。さあ、家族の笑顔を守る準備を始めましょう。
なぜ「普通の家庭」ほど遺言書が必要なのか?【データで見る真実】



「遺言書なんて、豪邸に住んでいるお金持ちが書くものでしょう?」
ご相談に来られるお客様の多くが、最初はそう口にされます。しかし、結論から申し上げます。相続トラブルのリスクは、資産家よりも「普通の家庭」の方が圧倒的に高いのが現実です。
ここでは、なぜ一般家庭こそ遺言書が必須なのか、その理由を客観的なデータとFPとしての現場経験から紐解いていきます。
相続争いの「約8割」は一般家庭で起きている
まず、衝撃的な事実をお伝えしなければなりません。
裁判所が公表している「司法統計」によると、遺産分割事件(相続争いで裁判所が介入した件数)のうち、遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約77%を占めています(※令和元年度司法統計より)。さらに驚くべきことに、そのうちの約3割は「1,000万円以下」の家庭での争いです。
「うちは財産がないから揉めない」のではなく、「財産が少ないからこそ、譲り合う余裕がなく揉めてしまう」というのが、残酷ですが真実なのです。
「分けられない財産」が引き起こす悲劇
なぜ、普通の家庭でこれほど揉めるのでしょうか。その最大の理由は、資産の内訳にあります。
資産家の財産は、現預金や株など「数字で割り切れる資産(流動資産)」が多く含まれていることが一般的です。これらは1円単位で公平に分けることができます。
一方で、日本の一般的な家庭の財産は、「自宅(不動産)」が資産の大部分を占めています。例えば、「2,000万円の価値がある実家」と「300万円の貯金」があったとしましょう。相続人が兄弟2人の場合、どう分ければよいでしょうか?
- 兄:「俺が実家を継ぐから、お前は300万円で我慢してくれ」
- 弟の言い分:「それじゃ兄貴がもらいすぎだ。不公平だ!」
- 弟:「じゃあ実家を売ってお金にして半分こしよう」
- 兄の言い分:「俺はずっと親と同居してたんだ。今さら出て行けと言うのか!」
このように、不動産はケーキのようにナイフで半分に切ることができません。この「分けられない財産」こそが、家族の絆を引き裂く最大の要因となります。
遺言書は、こうした「分けにくい財産」に対して、親(被相続人)が「誰に、何を、どのような理由で渡すか」を指定できる唯一の処方箋です。
残された家族に「話し合い」という重荷を背負わせないためにも、普通の家庭こそ遺言書が必要不可欠なのです。
【徹底比較】自筆証書遺言 vs 公正証書遺言、あなたに合うのはどっち?
「遺言書を書こう!」と思い立った時、最初にぶつかる壁が「どの形式で書けばいいのか?」という問題です。
日本の民法では3つの種類が定められていますが、一般の実務で使われるのは「自筆証書遺言(自分で書く)」と「公正証書遺言(公証人に作ってもらう)」の2つだけです。
それぞれの特徴を理解せずに書き始めると、「苦労して書いたのに無効になった」「お金をかけすぎた」といった後悔につながります。まずは以下の比較表で全体像をつかみましょう。
| 項目 | 自筆証書遺言(自分で書く) | 公正証書遺言(プロに依頼) |
| 費用 | ほぼ0円(紙とペン代のみ) | 数万〜10万円程度(財産額による) |
| 手間 | 手軽(いつでも一人で書ける) | 手間がかかる(証人2名・資料収集が必要) |
| 確実性 | △ 不安(形式不備で無効のリスク有) | ◎ 完璧(公証人が作成するため無効なし) |
| 保管 | 自己管理(紛失・改ざんの恐れ有) | 公証役場で保管(安全・確実) |
| 死後の手続き | 検認が必要(※保管制度利用なら不要) | 検認不要(すぐに手続き可能) |
一番手軽な「自筆証書遺言」のメリット・デメリット
「自筆証書遺言」は、その名の通り、全文を自分の手で書いて作成する遺言書です。
- メリット:
思い立ったその日に、自宅で誰にも知られずに作成できます。費用もかからないため、「まずは書いてみたい」「内容を何度も書き直したい」という方に向いています。 - デメリット:
最大のリスクは「形式不備による無効」です。「日付があいまい」「署名がない」などの些細なミスで、ただの紙切れになってしまうケースが後を絶ちません。また、タンスの奥にしまったまま発見されなかったり、発見した家族が悪意を持って破棄してしまったりするリスクもあります。
さらに、死後に家庭裁判所での「検認(けんにん)」という手続きが必要になり、残された家族に1〜2ヶ月程度の時間的負担をかけることになります。
確実性No.1「公正証書遺言」のメリット・デメリット
- メリット:
プロが作成するため、法的な不備で無効になることはまずありません。原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もゼロ。死後の「検認」も不要で、すぐに預金の解約や不動産の名義変更手続きに入れます。 - デメリット:
作成には手数料(財産額に応じますが、数万円〜)がかかります。また、証人2名の立ち合いが必要なため、内容を完全に秘密にすることはできません。「手続きが仰々しくてハードルが高い」と感じる方も多いのが実情です。
【FPの推奨】法改正で最強に?「自筆証書遺言書保管制度」とは
これは、自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)を、法務局がわずか3,900円で預かってくれる画期的な制度です。
- ここがすごい!
- 法務局の職員が、外形的な不備(日付や署名の有無など)をチェックしてくれるため、無効リスクが激減します。
- 法務局で厳重に保管されるため、紛失・改ざんの心配がありません。
- 面倒な「検認」が不要になります。
つまり、「自筆証書の手軽さ」と「公正証書の安心感」をいいとこ取りしたような制度なのです。
「費用は抑えたいけれど、家族に迷惑はかけたくない」という普通の家庭にとっては、まさに救世主と言えるでしょう。
【完全ガイド】失敗しない自筆証書遺言の書き方 5つのステップ
「よし、書いてみよう」と思っても、真っ白な便箋を目の前にすると手が止まってしまうものです。
でも、難しく考える必要はありません。料理にレシピがあるように、遺言書作成にも「正しい手順」があります。ここでは、法的に有効な自筆証書遺言を完成させるための最短ルートを5つのステップで解説します。
ステップ1:財産目録(すべての財産の棚卸し)を作る
いきなり文章を書き始めてはいけません。まずは「自分は何を持っているか」をすべて洗い出しましょう。
不動産(土地・建物)、預貯金、株式、保険、自動車、貴金属、そして借金などのマイナス財産も含めます。
★ここで朗報です!
以前は、この「財産目録」もすべて手書きしなければならず、これが最大の挫折ポイントでした。
しかし、2019年の民法改正により、財産目録だけはパソコン作成や、通帳のコピー、登記事項証明書の添付でもOKになりました(※ただし、各ページに署名・押印が必要です)。これならグッと楽になりますよね。
ステップ2:誰に何を渡すか「遺産分割」を決める
財産が整理できたら、「誰に」「何を」「どれくらい」渡すかを決めます。
ここが一番の悩みどころですが、ポイントは「曖昧さをなくすこと」です。
- × 悪い例:「長男に、私の財産を任せる」
- (「任せる」では、あげるのか管理させるのか不明確でトラブルの元です)
- ○ 良い例:「長男〇〇に、以下の不動産を相続させる」
このように、主語と目的語をハッキリさせましょう。
ステップ3:全文を自筆で書く(※超重要)
ここが最重要ポイントです。遺言書の「本文」は、必ず全文を自筆(手書き)してください。
「字が汚いからパソコンで打ちたい」「家族に代筆してもらいたい」という気持ちはわかりますが、本文が手書きでないものは、問答無用で「無効」になります。
ボールペンや万年筆など、消えない筆記具を使いましょう(鉛筆や消せるボールペンはNGです)。間違えた場合の訂正方法は非常に厳格なルールがあるため、書き損じたら「新しい紙に書き直す」のが一番安全です。
ステップ4:日付・署名・捺印を忘れずに
書き上げた内容の最後に、以下の3点セットを必ず入れます。
- 日付:「令和〇年〇月〇日」と特定できるように書きます。「令和〇年〇月吉日」は無効です。
- 署名:戸籍通りのフルネームを自筆で書きます。
- 捺印:署名の横(または下)にハンコを押します。認印でも法律上は有効ですが、偽造を疑われないためにも「実印」の使用を強くおすすめします。
ステップ5:【最重要】「付言事項」で家族への想いを綴る
最後のステップは、法的効力はありませんが、FPとして私が最も大切にしている部分です。それが「付言事項(ふげんじこう)」です。
これは、遺言書の最後に添える「家族へのメッセージ」です。
単に「長男に家をやる」と書かれているだけだと、貰えなかった次男は「親父は俺が嫌いだったのか」と不満を持ちます。しかし、そこに理由が添えてあったらどうでしょうか。
「長男には、これから母さんの介護をお願いすることになるから、実家を相続させます。その代わり、次男には預金を多めに残しました。二人とも、これからも仲良く助け合って生きていってください。それが父さんの唯一の願いです。」
この数行があるだけで、残された家族の納得感はまるで違います。遺言書に「魂」を吹き込むのが、この付言事項なのです。
【ケース別】そのまま使える!自筆証書遺言の文例集(テンプレート)
「書き方の手順はわかったけれど、具体的な言い回しがわからない」
そんな方のために、よくある3つのパターンでそのまま使える文例をご用意しました。
ご自身の状況に近いものを選び、赤字の部分をご自身の情報に書き換えてご使用ください。
※注意:不動産の表記(所在・地番など)は、必ず法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」の通りに正確に記載してください。住所(住居表示)と地番は異なる場合が多いので要注意です!
ケースA:【配偶者に全財産】を相続させたい場合
(子供が独立した熟年夫婦や、子供がおらず配偶者にすべて渡したい場合など)
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金、不動産、その他一切の財産を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、妻〇〇〇〇を指定する。
付言事項〇〇、長い間連れ添ってくれてありがとう。私の死後は、無理をせず、好きな旅行や趣味を楽しんで、元気に暮らしてください。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都〇〇区〇〇一丁目1番1号遺言者 法務 太郎 ㊞
ケースB:【長男に自宅、次男に預貯金】と分けたい場合
(「分けられない不動産」がある最も一般的なケース)
遺言書
第1条 遺言者は、下記の不動産を、長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)土地
所在:東京都〇〇区〇〇一丁目
地番:1番1
地目:宅地
地積:100.00平方メートル
(2)建物
所在:東京都〇〇区〇〇一丁目1番地1
家屋番号:1番1
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階 50.00平方メートル 2階 40.00平方メートル
第2条 遺言者は、遺言者の有する〇〇銀行〇〇支店の定期預金(口座番号1234567)その他一切の金融資産を、次男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
付言事項
兄さんは家を継ぐ代わりに、母さんの面倒をお願いします。弟はその分、少し多めに預金を残しました。二人で協力して母さんを守ってください。
令和〇年〇月〇日
住所 (以下略)
遺言者 法務 太郎 ㊞
ケースC:【子供がいない】ため、配偶者と兄弟が相続人の場合
(何もしないと、疎遠な兄弟や甥姪にも相続権が発生してしまうケース)
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
【解説】
お子さんがいないご夫婦の場合、遺言書がないと、配偶者だけでなく「遺言者の兄弟姉妹」にも相続権(4分の1)が発生してしまいます。残された奥様(旦那様)が、義理の兄弟たちと遺産分割協議をするのは精神的に大きな負担です。
【現代の必須知識】スマホ・ネット銀行…「デジタル遺産」の落とし穴
遺言書の準備で意外と見落としがちなのが、スマートフォンやインターネット上の資産、いわゆる「デジタル遺産」です。
「通帳が見当たらないから、まさか銀行口座があるとは思わなかった」
「スマホのロックが開かなくて、有料サービスの解約ができない」
「FXや仮想通貨で大損していたことが、死後数年経ってから発覚した」
これらは今、急速に増えているトラブルです。紙の通帳がないネット銀行や証券口座は、家族がその存在に気づかなければ、永遠に闇に葬られてしまいます。
遺言書にはどう書く? パスワード管理の正解
では、IDやパスワードを遺言書に書くべきでしょうか?
正解は「NO」です。遺言書は死後、家庭裁判所や相続人に見られる公的な書類となるため、セキュリティ上、パスワードを直接記載するのは好ましくありません。
また、パスワードは定期的に変更するものなので、その都度遺言書を書き直すのも非現実的です。
遺言書本体には、以下のように記載します。
「その他、ネット銀行等のデジタル資産については、別紙の『エンディングノート』および『パスワード管理帳』を参照すること」
そして、遺言書とは別に、以下を記したメモ(エンディングノート)を準備し、信頼できる家族に保管場所を伝えておきましょう。
- スマホのロック解除コード(これが分からないと全てが始まりません)
- 利用しているネット銀行・証券会社の金融機関名(ID・パスワードまでは書かなくても、金融機関名さえわかれば家族が問い合わせて手続きできます)
- 月額課金(サブスク)のサービス名
デジタル遺産は「隠し財産」になりがちです。家族が路頭に迷わないよう、必ず「入り口」への地図を残してください。
提出前に必ず確認!無効を防ぐ「セルフチェックリスト10選」
お疲れ様でした。書き上げた遺言書を封筒に入れるその前に、最後にもう一度だけ確認してください。
ほんの少しのミスで無効になってしまうのが自筆証書遺言の怖さです。以下の10項目を一つずつ指差し確認しましょう。
- □ 全文自筆ですか?(財産目録以外、パソコンや代筆は一切ありませんか?)
- □ 日付は正確ですか?(「吉日」はNG。令和〇年〇月〇日まで特定できていますか?)
- □ 署名は戸籍通りですか?(ペンネームや通称ではなく、本名ですか?)
- □ 押印はありますか?(認印でも可ですが、実印がベストです。シャチハタは避けましょう)
- □ 訂正方法は正しいですか?(修正液や二重線だけはNG。所定の厳格な方式でないなら、新しい紙に書き直すべきです)
- □ 「相続させる」と書いていますか?(「任せる」「あげる」等の曖昧な表現になっていませんか?)
- □ 不動産情報は正確ですか?(登記簿謄本の通り「地番」で書いていますか? 住居表示ではありませんか?)
- □ 夫婦で一緒に書いていませんか?(1枚の紙に2人の遺言を書く「共同遺言」は無効です。必ず別々の紙に書きましょう)
- □ 遺留分を侵害していませんか?(特定の子供に「ゼロ」にする場合、トラブルの火種になります)
- □ 封筒の準備はできましたか?(保管制度を使わない場合は、封筒に入れ封印し、表に「開封厳禁」と朱書きしておくと安心です)
FPが教える「相続争いゼロ」を実現する家族会議のススメ
完璧な遺言書ができたら、それを金庫の奥に隠して終わり…ではありません。
私が多くの相続現場を見てきて痛感するのは、「生前のコミュニケーション不足」が最大の争いの原因だということです。
遺言書の内容を、親が元気なうちに家族にオープンにする。これだけで、相続争いのリスクは劇的に下がります。
「俺が死んだら、家は長男に継がせるつもりだ。その代わり次男には…」と、なぜそう決めたのか、その「想い」を直接言葉で伝えてあげてください。
言いにくい時の魔法のフレーズ
「遺言の話なんてしたら、死ぬのを待ってるみたいで…」と躊躇する親御さんや、「財産狙いと思われたくない」というお子さんは多いです。そんな時は、こう切り出してみてください。
「最近、ニュースで相続争いの話を見て怖くなってね。うちは仲が良いけど、万が一にもお前たちが困らないように、整理しておきたいんだ。」
「友達の家が相続の手続きですごく大変だったんだって。父さんたちが大切にしてきた家だからこそ、将来どうしたいか、元気な今のうちに聞いておきたいな。」
遺言書は、死ぬ準備ではなく、「これからも家族が仲良く暮らすための未来の約束」です。ぜひ、次のお正月にでも、おいしいご飯を食べながら少しだけ話してみてください。
よくある質問とその回答(FAQ)
Q1. 認知症気味の親に遺言書を書いてもらうことはできますか?
基本的には難しいと考えてください。遺言書が有効であるためには、自分の行為の結果を理解できる「遺言能力」が必要です。認知症の診断を受けている場合、後から「親は判断能力がなかったのに無理やり書かせた」と無効を訴えられるリスクが非常に高くなります。症状が軽度であれば、医師の診断書を取り、公証人と相談の上で「公正証書遺言」を作成できる可能性は残されていますが、慎重な判断が必要です。
Q2. 遺言書の内容は後から書き直せますか?
はい、何度でも書き直すことができます。遺言書が複数出てきた場合は、日付が一番新しいものが優先されます。人生の状況や資産内容は変化するものですから、数年に一度見直すことをおすすめします。前の遺言書を撤回したい場合は、単純にその遺言書を破棄するか、新しい遺言書の中で「前の遺言を撤回する」と記載すればOKです。
Q3. 遺言執行者って誰にお願いすればいいですか?
遺言執行者とは、預金の解約や名義変更などの手続きを代表して行う人です。信頼できる家族(財産を多く受け取る人など)を指定するのが一般的で、費用もかかりません。もし家族だけで手続きするのが不安な場合や、家族関係が複雑で揉めそうな場合は、弁護士や司法書士、信託銀行などの専門家を指定することもできますが、その場合は報酬が発生します。
Q4. エンディングノートと遺言書は何が違うのですか?
最大の違いは「法的効力の有無」です。遺言書は財産の分け方を法的に強制できますが、エンディングノートには法的な拘束力がありません。その代わり、形式は自由で、介護や延命治療の希望、お葬式の要望、友人へのメッセージなどを気軽に書くことができます。「財産(カネ)のことは遺言書、心(ハート)のことはエンディングノート」と使い分けるのがベストです。
Q5. 法務局の保管制度を使えば、検認は不要になりますか?
はい、不要になります。これが「自筆証書遺言書保管制度」を利用する最大のメリットの一つです。通常、自宅で保管していた自筆証書遺言は、死後に家庭裁判所で「検認」という開封の儀式が必要で、これに1ヶ月以上かかります。しかし、法務局に預けておけば、この検認手続きをスキップして、すぐに銀行や法務局での相続手続きを開始することができます。
まとめ
「普通の家庭」こそ要注意
相続トラブルの約8割は資産5,000万円以下の一般家庭で起きています。特に「分けられない不動産(実家)」がある場合は、遺言書による事前の対策が必須です。
形式は自分に合ったものを
手軽な「自筆証書」か、確実な「公正証書」かを選びましょう。自筆証書なら、法務局の「保管制度」を利用することで、安価かつ安全に管理でき、検認も不要になるためおすすめです。
書き方のルールを厳守
「全文自筆(財産目録は除く)」「日付」「署名」「押印」は必須条件です。不備があると無効になるため、記事内のチェックリストを活用して慎重に作成してください。
デジタル遺産を忘れずに
ネット銀行やスマホの契約は、通帳がないため発見されにくい資産です。IDやパスワードそのものは書かず、金融機関名やスマホのロック解除コードを記したメモ(エンディングノート)を別に残しましょう。
付言事項で想いを伝える
法的な分け方だけでなく、「なぜそうしたのか」「これからも仲良くしてほしい」という親心を「付言事項」に書き添えてください。これこそが争いを防ぐ最後の砦であり、家族へのラブレターとなります。